たとえ病院の中であっても、母親の役目はあります。
ゆっくりとできない、気が休まらないと思う人もいるかもしれませんが、それは、逆に、彼女に生きる力を与えてくれているように思えます。
6年前、夫が口腔内の腫瘍摘出手術を受けた。良性のものだが、長期にわたると癌化しやすいということで手術をすることになった。約2週間の入院だった。
その間、会社の誰ひとりとして「ゆっくり休んでください」とは言わなかった。
重篤な病気ではないということもあったが、「会社の方は大丈夫だから」という言葉は「いなくても大丈夫だ」と聞こえるらしい。
逆に、「早く戻ってきてほしい」という言葉は、病気と戦っている者にとっては一日も早い復帰に対するモチベーションにつながる。
「Mさんがいないと大変ですよ。」
夫は、予定よりも2~3日早く退院し、仕事に復帰した。
Nさんのお見舞いに行った日、Nさんの娘が不登校気味であると言っていた。次の朝、6時にモーニングコールをすると約束したそうだ。彼女は、病院にいても母としての役目がある。
Nさんはスケジュール帳を持っていた。
娘たちの学校行事は、すでに、把握している。これは、入院前から変わっていない。
Nさんは、スケジュール帳のカレンダーを指さしながら言った。
「前回は帰宅期間が2週間だったけど、3週間に伸びたでしょ。
それで、次の入院日だけど、Y奈の誕生日が9月のこの日だから、ここはウチにいたい。
そしたら、前後で高校と中学の文化祭があるから、この期間は在宅期間にするとね……」
Nさんは、入院期間、在宅期間を書いたメモを見せた。
「3.5週間の周期で入院したら、夏のコンクールも見られるし、誕生日も文化祭も大丈夫だってことで、今日、先生に入院計画出した。」
―つまり、自分で計画したってこと? 先生、なんて言った?」
「計算苦手だから、いったん持ち帰るって」
またまた、大爆笑!!
だいたい、自分で入院計画立てる人がいますか?
あなた、本当に化学療法してるんですか?
私たちがお見舞いに言った次の日から、想定通り、白血球の数値が下がり始め、Nさんはテント生活になった。
Nさんは、感染予防のためにベッド周りに張られるビニールカーテンのことをテント生活という。
今日、久しぶりにnさんからLINEメッセージが来た。
相変わらずテント生活だけど、経過は良好。
吐き気もなし。シャワーもできた。
選択食も希望通りだけど、前回の入院時と同じご飯100gだから、ドンブリの時は物足りない。
―ピラフの時は150gにしてもらいます―
メッセージ見て、思わず笑ってしまった。
私は、彼女に宿題を伝えた。
―退院したら、Nさんのところに行って、おいしいコーヒー飲ませてもらうからね―
子どものこと、夫のこと、母親のこと、いろいろな心配をすることで、自分がいなければという思いが強くなる。病気なんか、この気持ちを上回るほどの力はない。絶対ない!!
私たちにも、ちゃんとやってもらわなければならないことがある。
Nさんの娘は、きっと、「ママ、いつまでも心配かけるよ」と言っているんだ。ママに生きていてもらうために。
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