退院後、はじめてNさんの家へ行ったとき、いくつか約束をした。
ひとつ: Sさんも誘って、食事に行こう。
ふたつ: やずやに雑穀米を注文して、3人で分けよう。
一つ目は、先週の土曜日に実現した。丸一日おしゃべりを楽しんだ。
二つ目は、今日の午後。
Nさんが、Sさんと私のそれぞれの家に持ってきてくれるということだったが、「足の踏み場もない」ので私の家にくるとSさんから連絡があり、3時半ごろから3人がウチに集結した。
私たちがシェアしたのは、やずやの「七彩御膳」だ。
「今キャンペーン中で、3袋おまけについてたから、一人11袋でぇす。」Nさんは、絵入りのポストイットに一人1584円と書いて貼ってくれていた。
Nさんの再入院は、来週の木曜日になった。
五穀米のおかげで、私たちは入院する前に、また、楽しいおしゃべりができた。
二人とも、わたしの長女の結婚式の写真をまだ見ていなかった。
PCにディスクを入れ、スライドショーで写真館でのショットと、式、披露宴を見てもらった。
「娘の花嫁姿が見られて、もうすぐ孫の顔も見られる。本当に幸せね」とNさんが言った。
今まで、他の人からも何度もこのようなことを言われた。その都度、あなただってそのうちよと笑って返す。けど、Nさんから言われると、返す言葉が見つからない。
Sさんも、あえて沈黙を作らないようにしているのがわかる。
PCには、長女が20歳になった時に撮った家族写真が映された。
「子どもたちが大きくなってから、家族写真撮ってないな。とったほうがよかったなあ」
と、Nさんが独り言のようにつぶやく。
ーあしたはあなたの誕生日だから、記念に撮ればいいいよ。
私は、心の中で言葉を返した。
わたしはNさんが言ったことを、いろいろ覚えている。
Nさんが今、興味があると言ったこと、やりたいと言ったこと。
足つぼマッサージ
ヨガ
家族旅行
子どもの体育祭を見ること
新聞のコラムの書き写し
娘たちの成人式の晴れ姿を見る
長女の花嫁姿を見る
あと10年は生きる
四十過ぎの人にとって、10年は短すぎる。
でも、Nさんにとっては10年は”望み”でしかないのだ。
この現実は、私には、まだ、受け入れがたい。本当に受け入れれば、心が粉々に崩れてしまいそうに思える。なのに、彼女は今日も明るく、ロードバイクにまたがって颯爽と風を切る。
彼女のどこに、そんな恐ろしい病気が潜んでいるのか。
会えば会うほど、これはドッキリカメラかなんかじゃないのかと思う。
これは何かの間違いで、お疲れさまでした~~~っと、ドッキリの看板もって現れてくれないかと思うのだ。
でも、いちばんそう願っているのは、他でもないNさんなのだ。
来週からの治療の成果があがるように、ただただ、祈るのみ。
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