2014年6月17日火曜日

願掛け地蔵

やっと、Nさんを長命杉に連れて行くことができた。もちろん、Sさんもいっしょだ。といっても、実は、案内してくれたのは他でもないNさんだった。大爆笑の一日。「3匹のおっさん」ならぬ3匹のおばさんの濃い一日。

Nさんが退院して1週間が過ぎたころ、わたしはNさんにLINEで連絡した。
ーランチ行きましょう。そのあとで、行きたいところがある。
   行きたいところって?
ーspiritual treeにパワーもらいに行く。
   
 
そして、今日。私は駅の近くで仕事があったので、SさんにNさんを迎えに行ってもらって、駅前のホテルのレストランで待ち合わせをした。
5月から新しいメニューに変えたと言うので行ってみたら、メインディッシュをオーダーしたら、あとはバイキング。パン、ご飯、スープ、お味噌汁、そしてサラダとコーヒー紅茶も自由で、ソフトクリームまであった。
Nさんの食べっぷりは、すばらしかった。
「このおかずだったら、ご飯がほしい」
Nさんは、ゆっくりだけど、わたしよりたくさん食べて、けろりとしている。
わたしたちはNさんの病気のことなど気に掛けることはなかった。


ーじゃ、今から、霊木にパワーもらいに行きましょう。
私たちは、Sさんの車で移動した。
「ところで、どこいくの?」
―長命杉から命のパワーをもらいに行くんよ。2番札所、知ってる?
「それ、いつも行ってるお寺。」
え~~~~~~!!!!


わたしもSさんも、思わず大声を出してしまった。せっかくの企画が。。。。。
と思ったのもつかの間、Nさん、
「でも、そんな杉あったかなあ。」
Nさんは、なぜ、そのお寺に通い始めたかを話した。


  母がいろいろな人に聞いて、その寺に「身代わり地蔵」があるって教えてくれた。願掛け地蔵な んだけど、自分と同じように病気を患っている人が、そこにお願いに行ってる。コーヒー断ちしてるのも、行けば理由がわかる。


ー最初に極楽寺に行くって伝えてたら、今日の企画はなかったよね。
「長命杉はお参りしたことがないから、行こう。せっかくだから、お地蔵さんにもお参りしてくる。でも、お線香持ってきてないわ。。。」
ーあるよ~
Sさんは運転しながら車のボックスを開けて、お線香とライターを取り出した。
え~~~~~~~


今度は、私とNさんが大声を出した。
そんな偶然てあるかしら。私たちはお腹を抱えて笑った。


極楽寺




願掛け地蔵は、車を泊めた場所のすぐ前にあった。
「これ、私のカップ」とNさんは、地蔵の横に置いてあったコーヒーカップを取り上げ、たまった雨水を捨てた。それから、地蔵の横につるしてある赤い前掛けを指して、
「これも私。祈願事を書いてつるしてあるの。全部、母が友達から聞いてきてね。ここにきて、コーヒー断ちして頑張るから、この病気を消してくださいってお願いしてる。そしたら、主人まで一緒にやってくれて。。。」
Nさんはお線香をあげ、真言を唱え、地蔵の前で手を合わせ祈祷を行った。
私はNさんに傘をさしかけた。誰も何も話さない。静かな、静かな時が流れた。


私は、願掛け地蔵の前で手を合わせるNさんの姿を、まともに見ることができなかった。
こみ上げる思いを抑えていると、ふいにNさんが振り返る。
「みんなもお参りして。あ、急にはまとまらないかな。先に、その長命杉をまいりましょう」
案内するはずの私だったが、結局、私たちはNさんのあとをついていくことになった。


梅雨のしっとりとした湿り気と薄明るい空気が、静けさとあらたかさを一層際立たせた。
平日の昼間とあって、巡礼人のすがたもほとんど目につかない。
寺は三方を山に囲まれ、緑の中に吸い込まれていくように感じる。広い庭園は、何か特別な雰囲気を醸し出している。極楽浄土とはこのようなところをいうのだろうか。
次第に心が深いところに落ちて、何とも言えない静寂がしみ込んできた。



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