こんなに早く、Nさんは逝ってしまいました。いや、こんなに長く、Nさんは生きたのです。
深い悲しみの前に、不謹慎かもしれないけど、安堵があります。
がんばったね、と、何度も、その安らかな寝顔に語りかけました。
Nさんのほほえみに、微笑み返しました。
亡くなる前には、炊事や洗濯もこなし、重い物こそ持てないけど、家族のために母として、妻として、働いたそうです。食事も少し口にして、少しずつ回復しているかのように見えたと、Nさんのお母さんは言いました。
元気になると思っていたのに。
昨日の夜、救急車で病院に行ったあと、どうして朝までついていてあげなかったのか。
お母さんは、何度もこう言って、涙を流しました。
Nさんは、家族が来るのを待たずに、病院で息を引き取ったそうです。
さいごまで、家族のことを思いながら、自分のことより、家族のことを心配して、辛い体を気力で支えながら、子どもたちのために生きました。
わたし、死ぬ気がしないのよね。
これは、Nさんが何度も口にした言葉です。
でも、最後の入院では、その言葉は聞かれなかった。
もう、このまま終わってしまうのじゃないかしら、よくなっていく感じがしない、こんな弱気なことを口にすることもありました。
でも、彼女は、生きました。
余命を告げられていたのか、いなかったのか、それはわからないけど、彼女は最後まで生きることをあきらめませんでした。
亡くなったのは、朝,7時2分。前の晩から、苦痛を訴えていたけど、苦しむこともなく眠るように亡くなったのではないでしょうか。そのことが、どれだけ、家族にとって救いになるか、Nさんはしっていたのでしょうね。きっと。
スキルス性胃癌の病巣は、いったんNさんの体から消え去ったように見せかけ、また、猛威を振るい、彼女の体をむしばんでいきました。でも、その間、どれだけ、復活したか。先の見えないトンネルの先に、点のように見える明かりを頼りに、必死で通り抜けようと頑張ったのです。
でも、わたしには、そこはトンネルではなかったように思えます。色とりどりの花が咲き、鳥が歌い、風が吹く、彼女の終焉に向けての花道だと、私にはそう思えるのです。
枕元に、娘さんが誕生日に送るつもりだった本がおいてありました。
『あなたの物語―人生でするべきたった一つのこと』水野敬也著
あなたに追いつこうと頑張って走って、走って、、、、、でも、勝ったのはあなたでした。
Nさんは、どんな気持ちでこの本を読みたいと思ったのか。
本が好きだったなあ。私のも貸してくれたあの本、また、読みたいな。
グルメの本買って、病院で見ていたなあ。
子どものことばかりしゃべってたなあ。
Nさんは、もしかしたら、今、いろんな人に自分の想いを伝えているのかもしれません。私が寝られないのも、彼女からのメッセージがたくさんあるのだろうと思います。
いつも、彼女の具合が悪くなったら、虫の知らせで伝わってきました。入院しても、必ず、わかる。
私に隠し事はできないよって、いつも笑ってたけど。
亡くなるときは、なんのしらせもなかったね。
本当に、何も感じなかった。
そんな人なんだね、Nさん。
明日はお通夜。明後日は告別式。
たくさんの友達が来てくれるよ。最後のお別れに。
わたしはどうしようかな。
いつ、最後のお別れを言おうかな。
言えるかな。
まだ、いっぱいしたいこと、いっしょに行きたいとこあったけど。
ねえ、私に貸してくれた本、貰ってもいいかしら。
その代り、Nさんが気に入った水野敬也の本、あげるから。持って行っていいから。
あの本、わたしのちょうだい。
早すぎたよね、もっと、生きたかったよね。
でも、Nさんは走りきったよ。
本当に、がんばった。
あなたに会えて、よかった。
本当によかった。
ありがとう、Nさん。
ありがとう。
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